【医師監修】
かゆみの原因と対処方法

肌のかゆみに悩むひとは
増えています

かゆみの原因と対処方法について、
専門家にききました。

かゆみ イメージ画像

かゆみの原因は
「肌のバリア機能の低下」

肌にかゆみが生じる主な原因は、肌のバリア機能の低下です。

肌のバリア機能とは、肌表面にある「角層(角質層)」が、紫外線や花粉、ウイルスといった外部刺激が体内に侵入するのを防ぎ、その一方で、体内から水分や油分が蒸発するのを防ぐ役割のこと。

バリア機能が低下した肌は、うるおいを保てずに乾燥します。乾燥した肌は、刺激を感知する神経が肌表面にまで伸びてきて、外部からの刺激にも敏感に反応し、かゆみを生じやすくなります。

健康な肌
角層内部の水分や油分のバランスが良く、肌のうるおいが保たれた状態。肌のバリア機能が正常に働くことで、外部の刺激から体を守っています。
バリア機能が低下した肌
角層表面のめくり上がりやひび割れにより、内部の水分が蒸発しやすい状態。肌が乾燥し、外部からの刺激を受けやすくなります。

肌のバリア機能を
低下させる要因

肌のバリア機能を低下させる要因は、日常生活の習慣や、現代に多い花粉やストレスの影響などさまざまです。かゆみを防ぐには、自分の症状の原因を知り、予防を心がけることが大切です。

外部からの刺激による要因

  • 乾燥や寒さ、
    紫外線などによる
    肌へのダメージ
  • からだの洗いすぎによる
    保湿成分の減少
  • 衣類の摩擦や
    締め付けによる刺激
  • 花粉などのアレルゲンが
    肌に付着
  • 汗にふくまれる成分が
    刺激物質に変化

体内の変化からくる要因

  • 生理中やその前後の
    ホルモンバランスの変化
  • 慢性的な睡眠不足など
    睡眠の質の悪化
  • 偏った食事による
    肌への栄養不足
  • 喫煙による
    血流の悪化
  • 加齢による
    肌機能低下・皮脂不足
  • 過度なストレスによる
    免疫力の低下
  • 内臓疾患
    肝臓病や腎臓病、血液疾患、
    膠原病といった自己免疫疾患など

かけばかくほど
かゆみが増すのは、なぜ?

肌のかゆみは、何らかの刺激を受けることで、ヒスタミンなど「かゆみ物質」が細胞から放出されて、知覚神経の末端に伝わることで起こると考えられています。

「かゆみ物質」が放出される原因には、食べ物、衣類のこすれ、室温や湿度などさまざまなものがありますが、そのひとつが、肌をかくことによる刺激です。

つまり、肌にかゆみを感じてかくと「かゆみ物質」はさらに放出されて、さらにかくことで肌のバリア機能は低下し、外部からの刺激に敏感になっていく……悪循環に陥るのです。かいて傷ついた肌は、細菌などが侵入しやすくなり、化膿や慢性の皮膚疾患などを引き起こすこともあります。

肌のかゆみには、かかない対処が大切なのです。

かゆみの対処・治療法

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つらい肌のかゆみには、症状の悪化を防ぐだけではなく、かゆみを繰り返さないよう肌のバリア機能を回復する対処・治療が必要です。また、かゆみを我慢して放っておくことも、症状を悪化させ、さらなる肌トラブルの原因となります。

症状と疾患により、皮膚科を受診するか、もしくは市販の薬を活用したセルフメディケーション* の2つの方法から選択しましょう。

  • ※セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)は定義しています。

かゆみの応急手当「かかずに冷やす」

かゆいのを、かかずに我慢するのはつらいものです。かゆみが強いときは、肌を冷やすのがおすすめです。冷たいおしぼりや、氷を入れたビニール袋や保冷剤をタオルでくるみ、かゆみのある部分に当てます。かゆみが鎮まって楽になりますよ。

皮膚科を受診すべき症状・疾患

我慢ができないほどの強いかゆみや、原因がはっきりしない、いつまでも治まらない症状・疾患は、皮膚科を受診しましょう。原因がはっきりしていても、症状が手のひら2枚分を超える広範囲の場合は、皮膚科で診察を受けてください。

また、顔面の場合は症状が狭い範囲でも、治りにくいケースもあります。症状が長引くようであれば、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。

疾患例
アトピー性皮膚炎 / 脂漏性(しろうせい)皮膚炎 / じんましん・乾癬(かんせん) / 軽快悪化を繰り返す手湿疹 など

市販の薬を活用した
セルフメディケーション

原因(虫さされやかぶれなど)がはっきりした症状や、短期間で治る疾患には、市販の薬を活用した対処・治療ができます。
早期に治療を開始できて、改善できるのがセルフメディケーションのメリットです。ただし、治療が適切でない場合はかえって症状を悪化させてしまうこともあります。薬剤師に相談の上、自分の症状、使用する部位に合った薬を購入することが大切です。

症状が重い・広範囲の場合や、市販の薬を使用して1週間程度経過しても症状の改善が見られない、一度治っても何度も再発する場合は、皮膚科で診察を受けてください。

疾患例
金属、植物、湿布・薬剤によるかぶれ / 下着など衣類の締め付け、摩擦による皮膚炎 / 身の回りの品による接触皮膚炎 / 虫さされ / あせも、しもやけ / 日焼けによる炎症 / 一時的な手湿疹、洗剤によるかぶれ・手あれ / ドライスキンに伴う軽度の掻き壊し など

市販の皮膚薬って、
どんなものがあるの?

市販の皮膚薬には、かゆみを止める成分のほか、皮膚の炎症を抑える成分、刺激に弱くなった皮膚を修復し、バリア機能を回復する成分などが配合された薬もあります。

また、同じ有効成分やステロイドの効果の強さでも、軟膏、クリーム、ローションなどさまざまなタイプから選ぶことができますので、症状はもちろん、使用する部位や塗り心地の好みで選ぶこともできます。
ステロイドの効果の強さについては、塗る部位や、使用する人の年齢によって使い分けることが大切です。

ステロイドについて詳しくはこちら
部位ごとの特徴をもっと詳しく知りたい人はこちら

かゆみの予防法

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かゆみを予防する上で大切なのは、肌のバリア機能を低下させないことです。自分の症状の原因がはっきりしている場合は、それが肌に直接触れないようにします。原因がはっきりとわからない場合でも、肌を清潔に保つことで原因を減らすことができます。

  • 肌の乾燥を防ぐ
    バリア機能が低下して乾燥した肌は、かゆみが発生しやすくなります。保湿剤を塗り、肌を乾燥から守るケアを心がけましょう。ドライスキン(肌が乾燥した状態)を予防することが大切です。
  • 紫外線を防ぐ
    紫外線が強い時期や時間帯に外出するときは、日焼け止めを塗ったり、腕や首などを覆う服を着たり、日傘をさしたりして肌を守りましょう。
  • 入浴習慣を見直す
    体を洗う時はタオルなどを使わずに、なるべく少量の石けんやボディソープを充分に泡立てて、優しく洗いましょう。お風呂は40℃以下の熱すぎない温度に設定します。
  • 質の良い睡眠をとる
    睡眠不足は、それ自体がストレスとなります。質の良い睡眠をとるよう心がけましょう。
  • バランスのとれた食事をする
    たんぱく質、ビタミン・ミネラル、食物繊維などをバランスよくとりましょう。乾燥肌にはサバやイワシなどの青魚や、かぼちゃ、にんじんなどの緑黄色野菜もおすすめです。
  • 皮膚への刺激が少ない
    衣類を選ぶ
    「締め付け感がある」「縫い目がかたい 」「ちくちくする」など、肌に刺激を与える衣類は避けましょう。
  • 汗をかいたら、
    そのままにしない
    汗をかいたら、早めにシャワーで流すことが重要です。外出先では、こまめに汗を拭き取るケアが効果的です。

監修の先生ご紹介

横山 美保子 先生〈横山皮フ科クリニック〉
アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、にきびなどの疾患を主に診察。皮膚科の延長としての美容皮膚科の診断および治療もおこなっている。

デリケートエリアのかゆみについて

デリケートエリアのかゆみ特有の原因と対処方法を専門家に聞きました。

かゆみの原因

デリケートエリアにおりものや経血が付着したまま長時間放っておくと、かゆみの原因になります。

元々デリケートエリアにはおりものや経血が付着することが多く、尿道口や肛門に近いこともあり、かぶれや感染などが起きやすい部位といえますが、季節(汗をかく夏はムレ、冬は乾燥しやすい)や月経周期(排卵期や月経前にはおりものがふえ、月経期は肌が敏感になりやすい)によりさらにかゆみが発生しやすくなります。

また、常に下着などに覆われていて通気性がよいとはいえず、ナプキンや下着などによって擦れたり、きつい下着による圧迫や座りっぱなしによる圧迫もおこりやすく、皮膚がダメージを受けやすいのです。

かゆみの対処・治療法

デリケートエリアのかゆみには、掻いたり、一生懸命に洗うことはやめましょう。かえって悪化させてしまいます。

市販薬を使うなら、デリケートゾーン用のステロイドの入っていないものがお勧めで、一般的にはクリームが塗りやすいでしょう。薬剤師に相談してみてもよいと思います。
クリームの場合、まず患部をぬるま湯でさっと流す程度に洗ったらこすらずタオルなどを押し当てて水気を取り、クリームを指でかゆい部分に擦り込むように塗ってください。前後にはよく手を洗いましょう。
また、薬剤を予防のために使うことはよくないので、治ったら使用をやめてください。

なお、市販薬を塗る場合は添付文書に記載の回数や量を守り、しばらく使っても効果が感じられなければ、婦人科か皮膚科で診察を受けてください。

かゆみの予防法

  • 圧迫に気をつける
    皮膚がダメージを受けないよう、きつい下着による圧迫や、座りっぱなしによる圧迫に注意しましょう。
  • ナプキンをこまめにかえる
    ナプキンやシートは下着と違って皮膚と密着するので、月経中はナプキンをこまめにかえ、ムレないように注意しましょう。
  • 下着は刺激のないものにする
    月経が終了したら、綿の下着など通気性のよいものを心がけ、肌をいたわってあげてください。
  • 洗いすぎない
    基本的に石鹼は必要なく、毎日入浴かシャワーで流すだけで十分です。最近は清潔指向でしょうか「洗いすぎ」の方がふえました。「洗いすぎ」は皮膚を守る常在菌を洗い流してしまいますし、ゴシゴシ洗って角質を傷つけ皮膚のバリア機能を損なうと、かえって雑菌が付きやすくなることもあるのです。

監修の先生ご紹介

東舘 紀子 先生 産婦人科専門医・女性ヘルスケア専門医